エジプトのホテルでキングになった話②

旅行

前回の話でこのホテルのキングになったと言ったが、正確にはキッズとティーンのキングであり、このホテル全体のキングではなかった。
ホテル統一はまだ夢のまた夢。

マリオで例えるなら、ステージ1。いや、ステージ1の1体目のクリボーを飛び越えた所だ。
ホテル統一するためには、自分よりも一回り二回り年上の大人達から認められ尊敬の念を抱かれなければならない。
「これは、とてもやり甲斐のある難易度の高いRPGゲームだ。」と思っていたらまさかの糞ゲーだった。

一億総シャイ国家日本で、人脈を広げるのは至難の業だ。
だから人脈を広げることができるという甘い謳い文句に釣られ多くの人がネットビジネスの世界へ引きずり込まれていく。
しかし、アラブ社会では真逆。アラブ社会で人脈を広げるなど朝飯前だ
人脈を広げるというより勝手に広がっていく。
気づけばみな友達。しかも、大学初期に現れるよっ友などではない。本当の友達だ。
友人ができるとウキウキで自分の家族に紹介するという文化の恩恵を存分に享受した。
キッズやティーンに連れられ、彼らの家族に紹介される。
そして、握手して、ハぐして、ほほにキスされる。この一連の流れをひたすら繰り返す。
気がついたらホテルの客全員と友達になっていた。ホテル統一完了

部屋から一歩外に出たら、私にプライベートな時間はなくなる。
常に誰かに話しかけられ、常に誰かがついてくる。
ビーチに座っていると誰かが私に酒を持ってきて、パーティーが始まる。
朝食と夕食のバイキングでは、勝手に誰かが盛り合わせを持ってくる。
バイキングの醍醐味といえば、食べたいものを好きなだけ取ってくること。
彼らは私からその醍醐味を奪ってきた。一瞬クーデターを起こされたのかと思ったが、彼らの瞳を見て全ては親切心であることが分かった。

プールでは必ずビキニを着たピッチピッチのティーンが両脇を固めてくれる。
その他にも私がキングであるエピソードはたくさんある。しかし、「お前の自慢話なんて聞きたくねえよ」と皆さんお思いだろうからここら辺で止めておく。
しかし、一つだけ皆さんに知っておいて貰いたいことがある。
キングがキングであり続けるのは、とても大変だという事だ。
しかも、二代目や三代目のボンボンではなく、初代だとなおさらだ。
周りの人は、常にキングに期待している。キングとして彼らの期待を裏切ってはならない。
ある時、プールサイドを歩いていると、いつものようにみんなに話しかけられた。
どうやらみんなでプールへ飛び込みをしているらしい。
高さはおよそ4~5メートルほど。次から次へと老若男女とわず飛び込んでいく。
プールは大盛り上がり。そして満を持してキングの登場。盛り上がる一同。湧き上がるトモコール。
舞台は整った、みなが求めているのは私の一声。そして、飛び込み。

私は高所恐怖症だ。4〜5メートルから飛び込むのはかなり勇気がいる。しかし、ここで飛ばなければノリが悪い。飛ぶしかない。

歴史的偉人たちは一大勝負に臨む際に、士気を上げるための名言を残す。
カエサルは、「賽は投げられた明智光秀は、「敵は本能寺にあり」、そして日下部は「ヤッラー ネムシー
ヤッラー ネムシー」とはアラビア語で、英語に訳すと「let’s go」的な意味。
えっ?ださ。」と思われるかも知れないが、ここで大切なのは名言を吐くことよりも、簡潔なアラビア語を話すこと。その点でいうと、「ヤッラー ネムシー」は100点満点。
飛び込み台に移動し、あとは飛び込むだけ。日本のバラエティー番組に有りがちな、怖がって飛ばないで泣き叫ぶお馴染みのくだりなどいらない。
今求められていることは、即座に飛び込むこと。
しかし、みんなと同じように飛び込んでいては、キングの名が廃る。
スピーディーにかつアクロバティックに飛ぶことを求められている。
そこで私が選んだのは、タイタニックスタイル
誰もが一度は真似したであろう、映画タイタニックでレオナルド・ディカプリオが、船の先端でヒロインのケイト・ウィンスレットの腰に手を回し、ケイト・ウィンスレットが70°くらいの角度になる有名なシーン。

そこからケイト・ウィンスレットが地面に対し垂直に落ちていくのを想像して欲しい。
要は水面に対し平行、全身を水面にぶつけるスタイルだ。
自分で言うのもなんだが、この落ち方とても面白い。とにかく面白い。会場は大爆笑の大盛り上がり。
しかし、このスタイルは諸刃の剣。全身にトンデモない痛みが走る。肋骨がメキメキと軋み、肺が潰れそうになる。大きな代償の上に得た勝利。
なんとかキングの座を死守することができた

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執筆者 日下部智海

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