エジプトのホテルでキングになった話

旅行

このホテルには、イスラエル中から一夏の思い出を作りにイスラエル人がやって来る。
ホテルの従業員と私を除けば、おそらくみんなイスラエル人だ。
完全アウェーな世界にやって来てしまった。アウェーに滅法弱いで有名な私。しかし、このホテルで私は、キングになる事ができた。
切っ掛けは初日の夜に開催されたダンスパーティー。クラブのような空間で、誰もが聞いたことがあるヒップホップが流れている。
控えめに言ってもショボいため、クラブの中にいるのはキッズからティーンエイジャー達だ

コンスタンチンに誘われて私もついて行ったが、ここに長居する必要は無いと感じ部屋に戻ろうとした。
しかし、奴はその動きを逃さなかった。
トモ、俺日本のダンスが見たいな〜
全身に冷や汗をかいた。なぜなら私は生まれながらの音痴。そして、生粋のリズム感の無さ
私の母親は中学、高校と吹奏楽部からの音楽大学に進学し、中学校で音楽の先生をしていた。
いわば私は音楽界のサラブレッド蛙の子は蛙のセオリーでいくと、私が産まれるはずはない。
考えられるのは、遺伝子の爆発的退化、それとも母親の‥‥

これまでの人生で、歌、音楽、音楽発表会、カラオケ、ダンス、クラブ、ディスコという言葉から逃げてきた。
いい感じに前説をやり始めるコンスタンチン。
私の気持ちが落ちていくのに反比例して、盛り上がっていく会場。そして、ボルテージは最高潮に。
もう今さら引き下がることはできない。ここで引き下がれば日本人はノリが悪いと思われてしまう。
まさに退路は立たれた。背水の陣。JAPANを背負う重み。頭の中で流れ出す君が代。湧き上がるトモコール。
さっきほどまでアウェーだった会場が、みんなの声援で埼玉スタジアム2002へと変わっていく。
そこはもうキリンチャレンジカップ日本代表VSイスラエル代表。

舞台は整った。いざキックオフ

キックオフと同時に、地面に倒れこむ日下部
静まり返る会場。うつ伏せのまま全く動かない日下部。やがて静寂はブーイングの嵐へと変わっていく。
そして、ブーイングが最高潮に達した時に、ジワジワとケツから起き上がる日下部それと同時に再び静まり返る会場。
ドゥドゥドゥン、ドゥドゥドゥンと口ずさむ日下部。会場に1人こだまする謎の音色。見てはダメと言って妹の目を手で覆い隠す姉。漂うRの世界
そして、大の字に飛び上がる日下部。日下部が着地したと同時に、張り詰めた空気が破裂した。謎のポーズから繰り出す謎のダンス。響き渡る謎の日本語。
もうお分かりであろう。そう、私は一か八かで小島よしおのそんなの関係ねえをしたのだ。
イスラエル人しかいない会場で、謎の東洋人が、今までの人生で見たこともない動きを謎の言葉と共に繰り出す不思議な光景。リズムもクソもない。只ひたすら面白い、大爆笑の渦
そして、トドメのハイ、オッパピー
この瞬間に勝負は決まった。割れんばかりの拍手、我先にと群がって来るキッズ達、Such a cute manと言って、頬っぺたにキスしてくれるティーンの女の子
そう、私は勝ったのだ。絶対的に不利と言われた闘いを見事に制した。そして彼らのハートを鷲掴みにすることができた。
おそらくこの場にダウンタウンやとんねるずなどの名だたる芸人がいたとしても、何もできなかっただろう。
小島よしおだったからこそ生まれた勝利。
そして、今宵の天下分け目の合戦以降私はこのホテルのキングになった。

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執筆者 日下部智海

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