イスラム教の学校での話④ 卒業編

イスラム教

③の続き

前回の失敗により、いじられキャラとなってしまった私。
この学校の生徒は、みんなシリア人で、内戦から逃れてきた。
しかし、彼らは今でもシリアを愛し、シリア人であることを誇りに思っている。
そんな彼らの口癖は「シリ(シリア) べリ グッド。ヤーパン(日本) ノー べリ グッド

そう我らが技術大国日本に勝てる国などそうそうないのだから。
私が日本を作られた諸先輩方に感謝してると奴らは「腕相撲しようぜ」と言ってくる。
そう彼らは、頭脳戦では不利だと判断し、力での戦いを挑んでくる。
相手は、13~18歳の年下。対する私は20歳
普通に考えれば、20年分の筋肉で私が圧倒すると思われるだろう。
しかし、大きな問題がある。
まず基本的にアラブ社会は、筋肉至上主義であること。
みんな、ランボーみたいな筋肉に憧れ、トレーニングしている。
彼らは普通の13~18歳ではない。筋肉の星に生まれ落ち、筋肉が無いと人権が無い社会で生きてきた。
そう、彼らはネイティブ筋肉バカ

かなり体つきはしっかりしている。
それに対する私は、人生で一度も腕相撲で勝利したことがない。
負け組の中の負け組。
筋肉なんて、スーパーで買う刺身のたんぽぽなみにいらないと思って生きてきた。

そんな私が、彼らと腕相撲で戦わなければならない。
ポパイのように、ほうれん草を食べて、一瞬でムキムキになれれば良いのだが。所詮はアニメの話。ありのままの自分で戦うことにした。

8人斬りされ、腕はボロボロに。メンタルはズタズタに。
そして、奴らは恒例のSIRIコール。今まで、刺身の上のタンポポと同じと思っていた筋肉。その筋肉をないがしろにしたために生じた今回の敗戦。
そして、私は心に誓った。日本に帰ったら、刺身の上のタンポポを大切にしようと
敗戦があまりにも悔しかったので、筋肉達が、シャワーを浴びるたびに、バスルームの電気を消すイタズラをし、仕返しした。
すると奴ら、勝手に私のLINEで私の友達に、アラビア語のボイスメッセージを送るイタズラを始めた。
久しぶりに私からLINEがきたと思ったら、まさかのアラビア語。このままでは友達がいなくなるので、彼らと和解した。
そんなこんなで、1ヶ月が経ち、楽しかった学校での生活も終わりを迎えた。
みんなで昼ご飯を食べている時に、ムジャヒドゥーに呼ばれた。
どうやらムジャヒドゥーは、今日私がこの学校から去ることを聞いたらしい。
彼はいつものような元気がなかった。というより泣いていた。
いつもは私に対し、イキっているムジャヒドゥーも、本当は13歳の心優しい少年だ
ムジャヒドゥーが泣いているのを見て、私もウルっときた。しかし、我慢した
するとムジャヒドゥーは、左腕にはめていた時計を外した。
そして、それを私の左腕につけてくれた。
ムジャヒドゥーは、シリアに住んでいた時に、両親から貰った大切な時計を私にくれた。
これはただの時計ではない。ムジャヒドゥーのシリアでの楽しかった思い出、そして、シリアから命からがら逃げてきた時の恐怖、親元を離れこの学校にやって来た時の不安と孤独、それら全てを共にしてきた時計だ。
それを、私にくれた。


決して泣かないと決めていたが、遂に涙腺が崩壊した
産声を上げて以来、20年ぶりの涙。ゴビ砂漠と化していた私のまぶたが、潤いを取り戻した。
そして、お互いに強く抱きしめあった。とても長い時間。

私も何かムジャヒドゥーにあげたいと思い、バックの中から私の憧れの人である、スティーブン・ジェラードのユニフォームを取り出し、彼にあげた。
そして、お互いに再び強く抱きしめあった。
ムジャヒドゥーは、これ以上私を見ているのが辛いらしく、4階に消えていった。
そして、みんなに感謝を伝え、1人1人抱きしめあい、学校を後にした。
イスラム教の学校での話 終
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執筆者 日下部智海

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