イスラム教の学校での話③ 逆襲編

イスラム教

②の続き
前回、鳩係をクビになり、今まで学校の中でそこそこの地位と、皆からの敬愛の念を持たれていたが、一夜にして全てが崩れ落ちた。
みんなからの信頼と尊敬を取り戻さなければいけない。「トモミ ノー べリ グッド」のままでは死んでも死にきれない。「トモミ は べリ‐ グッド」なのだから。
イスラム教にはこういった言葉がある「目には目を 歯には歯を
日本風に言えば、「やられたらやり返す。倍返しだ
特に彼らに何かされたわけではないが、私は復讐の鬼になった。
それからの日々、「臥薪嘗胆」を胸に刻み込み、みんなからのイジリに耐え、逆襲のチャンスを窺っていた。
そして、私にはあって、彼らにはないものを発見した。
それは、だ。
金と言っても、現金はほとんど持っていない。
しかし、私にはクレジットカードがある。そう、「金で人望を買う作戦」だ。
流石に、全員分の飯を奢ることはできない。そこで、反日下部側のリーダー的存在、ムジャヒドゥーをターゲットに絞ることにした。

《右がムジャヒドゥー。写真で見ると可愛いクソガキだ。》

下記が作戦である
ムジャヒドゥーを飯に誘う⇒まあまあ高そうな店に連れていく⇒何でも頼んでいいよと言う⇒ムジャヒドゥー、お腹一杯になる⇒ムジャヒドゥーお会計が心配になる⇒そこで俺が、スタイリッシュにカードでお会計をする⇒ムジャヒドゥー、俺の事を尊敬する⇒学校に帰ってその事をみんなに言う⇒みんな、俺を再び尊敬する

作戦を立案し、早速行動に移った。
ムジャヒドゥーに「ちょっと外に出かけようぜ」と誘った。
すると、「今からお祈りあるから、無理」と断られた。
しかし、ここで諦めたらすべてが終わる。私は、「礼拝後ならいいだろう?」と何度も強引に誘った。
渋々ムジャヒドゥーの了解を得て、礼拝後、薄暗くなってきた街に2人で飛び出した。
適当に街を散策した後、思い切ってムジャヒドゥーに「飯食わない?」と切り出した。
女の子に「あそこのホテルで休憩しない?」と切り出す時以上に緊張したのを今でも覚えている。
するとムジャヒドゥーもお腹が空いていたらしく、了解してくれた。
その瞬間に、私は勝利を確信した。
そこで、適当に近くにあった店に入った。ここからは全て先ほど考えた作戦に則り行動した。
ムジャヒドゥーに食べたいものを注文させ、それを美味しそうに食べた。全ては作戦通り。あとは会計を済ませるのみ。
ムジャヒドゥーと一緒に席を立ち、お会計に向かった。そして、ポケットから颯爽とクレジットカードを出した。財布からではなく、ポケットから直接カードを出す仕草。まさにスタイリッシュである。
そして、銀色に輝く楽天カードマンを店員に渡す前に、ムジャヒドゥーの顔を見た。
さぞ俺に心酔し、目は光り輝いているだろうと思った。
しかし、ムジャヒドゥーの目は輝くどころか死んでいた。正確に言えば「トモミ マジデ バカ ナンジャ ナイノ」という冷めた目をしていた
なぜだ。なぜなんだ。作戦を完璧に遂行したはずだ。なのになんだこいつの目は。誰か訳を教えてくれ」と心で思っていると。
親切な店員が全てを教えてくれた。
ノー カード。マニー、マニー」と。
2日続けて、膝から崩れ落ちた。
クレジットカード非対応のお店を選んでしまう運の悪さ。海外だとだいたいどこの店でもカードが使えるという、今までの旅で得た経験が仇となった。俺は海外を知っているという驕りへ対する神からの天罰なのか。

しかし、今はそれどころではない。カードが使えないなら私はお会計を済ませることができない。
このままでは、無銭飲食で捕まってしまう鳩を捕まえるつもりが、自分が警察に捕まるとは、何たる皮肉。
日本円にして約600円。それが今は払えない。
現状を説明しようとしたが、英語が通じない。
するとムジャヒドゥーが店員とトルコ語で話し始めた。
ムジャヒドゥーはなんとトルコ語を話すことができたのだ。そして何やら店員を説得してくれている。
どうやら話がまとまったらしく、ムジャヒドゥーは私にここで残れと言って消えていった。
数分待つと、ムジャヒドゥーはお金を持って、帰ってきた。
そう我が愛すべき友人ムジャヒドゥーは、自分のお小遣いを取りに帰ってくれていたのだ。
そして、ムジャヒドゥーは私の代わりに会計を済まし、私達は店を出た。
私は、ムジャヒドゥーに惚れた。そして、一生ムジャヒドゥーさんに付いて行くと決めた。
学校に着いてから、ムジャヒドゥーさんに取り敢えず土下座した。ひたすらムジャヒドゥー先輩に謝り続けた。

《右がムジャヒドゥー先輩。13歳とは思えない大人の雰囲気。そして凛々しさ。鋭い眼つき。全てが完璧な男である。》
するとムジャヒドゥー先輩は、私の携帯を借り、Google翻訳のアプリを起動した。
そして、なにかアラビア語を打ち込み始めた。
文章ではなく、単語だった。
そして、携帯を私に返し、日本語に翻訳するボタンを押させた。
するとそこには「難民」の2文字が浮き上がってきた。
私は意味が分からず、どういう意味か聞いた。
ムジャヒドゥー先輩は最初に難民の文字を指さしてから、私を指さした。私は全てを理解した。

それからGoogle翻訳で、何度も「難民」を日本語で再生し始めた。
この事件の後から、私のあだ名は「難民」になった。
みんな私を呼ぶ時に、流暢な日本語で「難民」と呼ぶ。

私は、「お前らがそれ言う?」と思ったが、冷静に考えると「ぐうの音も出なかった。」

そして、私の名誉回復運動は失敗に終わった。
次回に続く
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執筆者 日下部智海

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