難民問題と日本

時事

あなたは知っていますか?世界中で何人が家を追われたか。

2018年6月にUNHCRが発表したグローバル・トレンズ・レポート2017によると、2017年末の時点で紛争や暴力、迫害によって家を追われた人の数は、6850万人。

6850万人の内訳は、国内避難民が4000万人、難民が2540万人、庇護申請者が310万人だ。

難民とは?

1951年の「難民の地位に関する条約」で、難民とは《人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた 》人々と定義されている。

トルコで出会ったシリア難民の子供達

この条約では、難民となるために三つの条件を課している。

  • 一つ目は、自国において迫害のおそれがあること。
  • 二つ目は、国外に逃れていること。
  • 三つ目は、国外に逃れたことが自分の意志であること。

これらの条件を満たした場合に、国際法上の難民として扱われる。

難民条約で想定される難民は、主に政治的に迫害された人を想定している。(例えば、独裁政権へ対し批判をしたために迫害された人。)そのため、自然災害及び武力紛争によって発生した避難民は難民条約上の難民には当てはまらない。また、国内避難民は条件の2つ目「国外に逃れていること。」に該当しないため難民条約上の難民に当てはまらない。

難民の得られる権利とは?

難民条約によって、難民の認定を受けた外国人は、原則として締約国の国民あるいは一般外国人と同じように待遇されると規定されている。日本では国民年金,児童扶養手当,福祉手当などの受給資格が得られることとなっており,日本国民と同じ待遇を受けることができる。

日本の難民認定者数

法務省の「平成29年における難民認定者数等について」によると、平成29年日本において難民認定申請を行った者は19629人であり、そのうち難民と認定された者は20人。申請者の国籍は82カ国にわたる。上位5位の国籍は、フィリピン、ベトナム、スリランカ、インドネシア、ネパールでこの5カ国だけで申請者数の70%を占めている。上位5カ国を見たときに違和感を感じる人がいるかもしれない。平和な国からの申請者が多いと。確かにこれらの国は一見平和に見えるかもしれない。しかし難民認定において重要なのは、その国の治安ではなく申請者が迫害されたかどうかである。

なぜ日本の難民認定者は少ないのか?

その理由は2つある。

・1つ目は、就労目的の「偽装申請」が横行していることだ。

短期滞在のビザ保有者や留学生・技能実習生が滞在中に難民申請を行った場合、申請6カ月後から日本での就労が一律に許可される。そして難民申請が却下されるまで働くことができる。この制度を利用した不正が横行しており、難民条約上の難民に該当しないため申請が却下されている。

偽装申請は許すべきではない偽装申請がこのまま横行すれば、ただでさえ厳格な日本の難民認定基準が更に厳格化される恐れがあり、本当に支援が必要な人の機会を奪ってしまう可能性がある。

・2つ目は、日本の難民認定基準が他国に比べ厳格すぎることだ。

日本では内戦から逃れてきた人々を難民として認定していない。上記で述べたように難民条約の難民の定義に内戦から逃れてきた人々は含まれない。日本政府は1951年の定義を未だに厳格に採用している。

難民認定制度の見直しの方向性に関する検討結果という国の資料に、「保護を必要としている避難民であっても,その原因が,例えば,戦争,天災,貧困,飢饉等にあり,それらから逃れて来る人々については,通常は,難民条約又は議定書にいう難民に該当するとはいえず,「難民」の範疇には入らないことと解釈されている」と記載されている。

日本では、内戦から逃れて来たシリア人が難民として認定されないケースがある。その代わり、「紛争待避機会」という名称で保護の対象に位置づけることにした。在留許可は一年ごとで、難民として認められた場合に与えられる公的な支援は受けられない。

国際社会と日本

難民条約を文面通りに履行しているので、問題はないと考える人もいるだろう。しかし、国際社会は1951年から進化し続けている。UNCHRの公式サイトでは、「今日、難民とは、政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々を指すようになっている。」と記載されている。世界各国も武力紛争から逃れて来た人々を難民として認定している。

UNHCRが難民の定義に「武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々」」を盛り込み世界へ発信しているのに、なぜ日本は旧来の考え方を維持し続けることができるかというと、 飽くまで条約が改正された訳ではなく、そして難民条約は難民認定に関し国家主権を全面的に認めているからだ

国家の主権の範囲内で行動しているだけなので、法的には問題がないと言える。しかし日本には国際社会の一員として、そして憲法の理念に平和主義を掲げる国家として重大な責任があると私は思う。

日本国憲法前文で以下のような事が記されている。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ

日本国憲法 前文

全世界の国民が「平和のうちに生存する権利」を有することを確認している。それにも関わらず、「平和のうちに生存する権利が侵害されている人々を助けなくて良いのか

平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたい思ふ」と記している。国際社会と真逆な行いをしている国が、名誉ある地位を占めることが果たして可能なのか

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」と記している。現在の政府のスタンス、そして我々国民の考え方は国家の名誉を傷つけていないだろうか

「日本はUNHCRに多額のお金を拠出しているので立派に国際貢献している」という主張がある。確かに2017年の拠出額は第4位だ。アメリカ、ドイツ、EU、日本という並びだ。しかし日本より上位の国・組織はお金を拠出していると同時に、日本の数10倍以上の難民を受け入れている。お金だけを払う日本の姿勢は「金は払うが自分の土地には来ないでくれ」と受け取られても仕方がない。

日本人の多くは、トランプ大統領の事を排外主義者だとバカにしている。しかし、私は彼を排外主義者だとバカにする権利はないと思う

トランプ政権下のアメリカでさえ2017年10月1日から2018年6月15日までの間に1万5383人の難民を受け入れている。日本の約770倍だ。

この数字を見ても、あなたはまだ、トランプ大統領のことを排外主義者だと笑えるか

1番の排外主義者は、自らを棚に上げトランプ大統領を笑っている日本人ではないか

本当に困っている人を受け入れるためにはどうすれば良いのか?

私は、第三国定住制度の枠を増やすべきだと思う。2010年度から日本政府は、第三国定住制度を利用している。

第三国定住とは、「難民キャンプ等で一時的な庇護を受けた難民を、当初庇護を求めた国から新たに受入れに合意した第三国へ移動させることで、難民は移動先の第三国において庇護あるいはその他の長期的な滞在権利を与えられることになる制度」だ。

UNHCRが国際的な保護の必要な者と認め、日本に対し推薦してくるため、偽装申請の心配がない。また、事前に難民キャンプで日本語や日本の文化についての研修を受け、来日後は、日本語教育や社会生活適応指導、職業相談・職業紹介など、日本で自立生活を営むために必要な支援を受ける。そして、約180日間の定住支援プログラム終了後、第三国定住難民は、地域社会での生活を開始する。こうしたプロセスを踏むため、難民の方が日本社会へスムーズに溶け込むことができる。2010年度から日本政府は、毎年約30名のミャンマー難民を受け入れている。

しかし、その数字は明らかに少ない。

他国の例として、 2015年にはアメリカが最大で8万2491人。次にカナダ(2万2886人)、オーストラリア(9321人)だ。UNHCRによると、2017年に第三国定住による受け入れを必要としている難民は119万人。一方で、2017年に第三国定住の枠組みで受け入れられる難民の数は17万人程度に留まる見通しだ。約100万人に及ぶ人々が、引き続き不安な状況で過ごさなければならない。

多くの難民は危険を冒し、海を越え、途方もない距離を歩き、少しでも環境の良い国に行こうとする。そして安住の地を求める旅路の中で、多くの命が失われている。

そうした悲劇を少しでも減らすために第三国定住の枠を増やし、安全に第三国に移ることができるようにすべきだ

難民の受け入れの話をすると、「テロが起こるのではないか?」や「ヨーロッパの失敗を知らないのか?」などといった、反対意見がある。しかし、テロを心配して難民を受け入れないのなら、それはテロに屈したも同然だ。また、日本は難民受け入れ後進国だからこそ、他国の成功例や失敗例から学ぶ事ができる

難民受け入れに反対している人は、一度このことを考えてほしい「もしも自分が彼らの立場だったら」と。

私たちだって、ある日突然難民になるかもしれない。もしも自然災害で日本に住む事ができなくなり他国に逃れたとしても、私たちは難民条約上の難民として保護されない。なぜなら、自然災害及び武力紛争によって発生した人は、難民の定義から明確に除外されているからだ。日本政府が未だに取っている考え方だ。

とてもとても恐ろしいと思わないか?命からがら逃れた際に、世界中が日本政府と同じ方針を取っていたら

人の痛みを知ることによって、我々は寛容になることができる。多くの人が、難民の苦しみを知り、自らに置き換え考える事で、他者へ対しての寛容な精神を育むことができる。そうすれば、今以上に日本社会もよくなる。

私は、難民受け入れ基準の緩和。そして、第三国定住制度の拡大。この二つを日本社会へ提言したい。

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執筆者 日下部智海

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