日本の難民認定制度を使った申請者へ対するいじめ

難民

もしもあなたが命からがら第三国に流れ、そこで難民申請をした際に、「あなたは難民としては元気過ぎる。本当の難民はもっと力が無い。」と言われたらどう思うか?

先日アムネスティユースの難民問題に関するイベントに参加した。そこである弁護士先生のお話を聞き、衝撃的な事実を知らされた。まさか日本でこんなショッキングな事が起こっているとは知らなかった。しかし、だからこそ報道する意義があるとも感じた。

今回の新たに知った事実を2回に分けて書いていく。本記事では、次回の記事を読むために必要な前提知識として、日本の難民認定制度の現状と問題点を述べる。

まずはじめに、日本の難民認定制度は下記のような3段階になっている。

一次審査→審査請求(二次審査)→行政訴訟

審査において不認定になると、異議申し立てができ再度違う形で審査してもらうことができる。一次と二次は行政により、そして行政訴訟(三次)は司法によって判断される。

一次審査とは?

まず日本において保護を求める人は、難民認定申請を行う必要がある。難民認定申請は、入国管理局で行うことができる。入国管理局で貰える難民認定申請書は28言語ある。下記はアラビア語の申請書で12ページに及ぶ、名前や出身地などの一般的な情報からどのような迫害を受けたのかなどを記入する。また、難民であることの立証は申請者が行わなければならないため、難民であることの証拠や関係者の証言を集めることが求められる。

 

難民認定申請後、入国管理局の職員である難民調査官によってインタビューが行われる。インタビューには難民調査官と通訳、本人のみが参加し、原則として申請者の弁護士が同席することは認められない

難民調査官が事実の調査をし、最終的に難民認定の判断を法務大臣が行う。そして難民認定か、不認定かという結果が通知される。インタビューの実施や結果通知までは数ヶ月を要することがある。

一次審査の問題点

問題点は数多くあるが特に私が今回取り上げたい問題は2つある。

1つ目は、難民である立証責任が申請者本人に課せられている点だ

自分が難民であることの証明を申請者自身が行わなければならない。そのためには、自国から出る前に証拠を集め、それを荷物のどこかに忍ばせ日本へ渡航しなければならない。しかし、庇護申請者の方々は国際難民法に精通したプロフェッショナルではない。私たちがそうであるように彼らも難民が何であるか詳しく知らない。そのため何が必要なのかわからずに、そもそも立証責任が申請者にあることを知らずに逃れてくる方がたくさんいる。

また仮に立証責任のことを知っており証拠書類を日本に持ち込もうとしても、その書類の存在を自国から出国する際、政府にバレたら命の保証はない。証拠書類を持ち運ぶ事はとてもリスクの高い事だ。

さらに、命懸けで持ち運んだ証拠書類を和訳しなければならない。知り合いのいない国で翻訳をしてくれる人を探すのはとても困難であり、経済的に貧しい人や日本でメジャーではない言語の場合、諦めてしまう可能性がある。

このように、逃げるのに必死だった申請者の方々に立証責任を負わすのは、ナンセンスだ。これらは制度を利用した国による申請者へ対するいじめだ。自国の政府から迫害され命からがら逃れてきた方々を日本では、優しく迎えるのではなく、さらに痛めつける制度が散見している

2つ目は、インタビューが密閉された空間で行われる点だ

難民調査官とは「出入国管理及び難民認定法第二条十二の二」によると、法務大臣が指定する入国審査官のことで国家資格を持った法律のプロではない。そのため難民条約の理解不足から不適切なインタビューが行われる可能性が指摘されている。

また、関東弁護士連合会の「難民認定手続の運用に関する調査報告書」によると、調査対象者で難民インタビューを受けた者の3分の1以上が、調査官の対応に問題があったと述べている。

具体例として 

・机を叩く,書類を投げつける等の粗暴行為

・「嘘をついている」「意味がない」「事実を言え,そうでなければ送還する」「言わないなら部屋に戻す」等の発言を含む罵倒・大声・糾問・冷笑・怒ったような態度

また、同調査書によると通訳人のスキルの問題が存在する。通訳の間違いなどの語学力の低さや、通訳人から「帰れ」「難民にはならない」等の発言がされている。

難民調査官と通訳人によるこれらの行為は明らかな職権乱用であり申請者の尊厳を踏みにじる行為だ。難民調査官の主な職務は事実の調査であり、通訳人の職務は当然の事だが通訳だ。申請者が難民かどうか判断するのは彼らの仕事ではない。難民認定の判断を下すのは法務大臣の仕事だ

難民調査官や通訳人にとっては、これまでの幾多のインタビューの1つであるかもしれないが、申請者の方々にとってはインタビューの結果により、国に送り返され再び迫害されるかもしれない。あるいは難民認定され新たな人生を歩めるかもしれない。自分の人生が決まるとてもとても大切なインタビューなのだ。そのインタビューを難民調査官や通訳のアタリハズレによって左右されるべきではない。密閉された空間で行われるからこそ、上記のような事例がおきている。それらを防止するためには、インタビューを録画し可視化すべきだ

仮滞在許可と一次庇護上陸許可

仮滞在許可とは、不法滞在者等の在留資格未取得外国人から難民認定申請があった際に、当該外国人が日本に上陸した日から6か月以内に難民認定申請を行った場合、または難民条約上の迫害を受けるおそれのあった領域から直接日本に入った場合などの一定の要件を満たすと、仮に日本に滞在することを許可され、その間は退去強制手続が停止される措置のことである。

仮滞在の許可を受けた人には、幾つかの条件が付される。

・住居や行動範囲の制限
・活動の制限(就労の禁止等)
・呼び出しに対する出頭の義務
・その他必要と認める条件

一時庇護上陸許可とは、難民に該当する可能性のある外国人に対して, 領土的庇護を与えるために、一時庇護のための上陸を許可すること。

一時庇護上陸許可を受けた人には、幾つかの条件が付される。

・上陸期間の制限(6か月以内)      ・住居及び行動範囲の制限               ・報酬を受ける活動の禁止等

平成29年における難民認定者数等についてという資料によると、仮滞在の許可の可否を判断した人数は784人で、仮滞在許可者は35人、許可とならなかった者の主な理由は、

・日本に上陸した日から6か月を経過した後に難民認定申請をしたこと…426人

・逃亡するおそれがあると疑うに足りる相当の理由があること…330人

・既に退去強制令書の発付を受けていたこと…214人 (1人の申請者について許可しなかった理由が複数ある場合はそのすべてを計上。)

平成29年に仮滞在の許可を受けたものは、わずか35人。約4%だ。

審査請求(二次審査)とは?

難民の認定の申請をしたのに認定されなかった人や難民の認定を取り消された人は、通知を受けた7日以内に法務大臣に対し,審査請求をすることができる。

審査請求では、法務大臣から指名された3人で1組みの難民審査参与員が、口頭意見陳述や質問等の審理手続を行う。参与員の提出した意見に法的拘束力はないが、法務大臣は参与員の提出した意見を尊重して、審査請求に対する裁決を行う。

難民審査参与員とは?

出入国管理及び難民認定法第六十一条の二の十によると、「難民審査参与員は、人格が高潔であつて、前条第一項の審査請求に関し公正な判断をすることができ、かつ、法律又は国際情勢に関する学識経験を有する者」と記されている。主に、大学教授や弁護士、NGO職員などである。

審査請求(二次審査)の問題点

申請者に立証義務や証拠の翻訳など一次審査と同じ問題を抱えている。

審査請求特有の問題としては、参与員の提出した意見に法的拘束力がないために「2013年から2016年にかけて参与員の多数が「難民相当」とした31人のうち、法務大臣が不認定にしたケースが約4割の13人である」と2017611日に東京新聞が報じた。難民審査参与員参与員の出した結論の約4割が法務大臣によって覆っている状況を鑑みると、法務大臣が難民審査参与員の意見を尊重しているとは甚だ言い難い

また、「人格が高潔」であるとされている難民審査参与員の不適切な発言が問題となっている。

全国難民弁護団連絡会議の「難民審査参与員 問題ある言動 実例集」によると、

・難民申請者の方へ対し「あなたは難民としては元気過ぎる。本当の難民はもっと力が無い

・レイプ被害者である女性へ対し「なぜ、その大佐はあなたを狙ったの?」 「美人だったから?

・飛行機で日本に来た申請者へ対し「飛行機に乗るという発想自体が難民とかけ離れています」などなど。

これらの発言を聞いて3歳の甥っ子を思い出した。甥っ子は自分の気になったことは何でも聞いてくるし、自分の話したい事を何でも話す。甥っ子はまだ自分の発言で相手がどう感じるのかなど考えたりする年頃ではない。飽くまで3歳児で可愛いから何を言っても許されているのであって、いい年こいた人格が高潔とされる難民審査参与人がすべきことではない。3歳児ではないのだから。いや、3歳児の方が他人へ対する思いやりに溢れている

この場を借りて全国の3歳児の皆様に、謝罪致します。「私が間違っていました。あなた達の方が問題ある言動 実例集に載っている難民審査参与人よりも高潔です」と。

私はジャーナリストとして難民の方々を取材することがある。その際に、忘れたいと思っている経験を話して頂くことがある。とても辛く、思い出したくない事を聞くので取材する前に信頼関係を構築し、取材中も質問や聴き方には最善の注意を払う。

それらは、ジャーナリストや難民審査参与人という肩書き以前に同じ人間として当然すべき配慮だ。

今から自分がする質問が相手にとってどれだけキツイもののか理解していれば、無関心、怠慢等の不適切な態度、まして居眠りなど言語道断だ

難民審査参与人の言動を聞いていると、日本へ来る難民申請者へ対する偏見を感じる。彼らの根底に偏見があるからこそ敬意を欠いた行動を取ることができるのだと思う。

難民審査参与人の申請者の方々へ対する無礼な態度を、彼らに代わって謝りたい。「みなさまの心を傷つけてしまい大変申し訳ありません

行政訴訟(司法審査)とは?

不認定の決定に対し、裁判所で争うことができる。申請者は、不認定の結果の通知を受けた後や審査請求と並行して、審査請求の裁決の通知を受けた後に訴訟をすることができる。
不認定の結果から 6ヶ月以内に訴訟の提起をしなければいけない。

難民不認定処分を受けた者が訴訟をおこし、入国管理局の判断が覆された事例はある。しかし、難民不認定処分に対する異議申出が棄却された翌日に、法務省入国管理局のチャーター機で強制送還させられた事件が起こった。

裁判を受ける前に送り返された人々は、難民認定の最後のチャンスを国によって奪われたのだ。日本国憲法32条の裁判を受ける権利外国人にも保障が及ぶという考え方が通説だ。このような行為は明らかな人権侵害だ。

また、自国において命が危険に晒されていた人々を送還する事は、難民条約のノンルフールマン原則によって禁止されている。もしも行政判断が間違いであった場合彼らの命が危険に晒される可能性があるため、行政判断の翌日に強制送還というのはあまりにも急すぎだ。より時間をかけ慎重に行うべきだし、裁判を望むのならば受けさせるべきだ。

おわりに

日本の難民認定制度には、大小様々な問題が存在するが、入国管理局が難民認定に関わっている事が一番の問題だ

入国管理局は怪しい人がいれば国にいれず、国内の不法滞在者などを送還する事がメインの仕事だ。そのため、難民の方を審査する際にも懐疑的な目で彼らを審査する。一方で難民というものはノンルフールマン原則にあるように送還していけないのが原則だ。

このように両者は真逆の作用を持つ。だからこそ、制度上の問題が発生している。これらを解決するためには難民局と呼ばれる入国管理局から完全に独立した中立の第三者機関を創設すべきだ。そして国際難民法のプロフェッショナルや難民条約に精通した通訳、さらに逃れてきた方の心のケアのために心理カンセラーなどを集め、難民認定の権限をその組織に一任すべきだ。

一人一人の命に関わる問題なので早急に実現することを願うと共に、一人でも多くの方にこの問題を知ってもらい世論を形成していきたい。

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