天声小悟:シャッターを降ろす米穀店

 全体の3分の2ほどのシャッターが下りている米穀店は、昭和の懐かしい匂いを残しながらも、どこか寂しい雰囲気が漂っていた。丸の内線・新中野駅から青梅街道を西へ5分ほど歩いたところに麻屋米穀店はある。店主は2代目の帯津さん。先代を含めると50年ほど営業を続けている▼店に入ってまず目につくのは、昔ながらの駄菓子だ。夕方になると小学生が集団でやってきて、好みの駄菓子を選ぶ。1番人気は当たり付きの「ヤッター!めん」。ふたを開けると一目であたりはずれが分かる。「10円や20円で好きなものを買えると言って喜ぶ子どもたちを見るのが1番の楽しみ」と帯津さん。そんな状況も時代と共に変化してきたのだと言う▼一昔前までは、個人商店が立ち並び、新中野も活気に満ちた町だった。しかし、JR中野駅周辺に飲食店や複合ビルの建設が相次いだことで、次第に若者はそちらへ流れていった。その影響は大きく、米穀のみでは集客が困難となり駄菓子をはじめたのだ▼そんな新中野は大手コンビニエンスストアに支配されるようになる。半径100m内に5つのコンビニエンスストアがひしめき合い、個人商店のほとんどは姿を消した。危機的状況に追い込まれながらも、帯津さんは個人商店の役割をはっきりと認識している。「セブンやピアゴとウチは別。ライバル意識はありません」▼帯津さんは、季節や時間帯によってシャッターを上げたり下ろしたりする。太陽の光で商品が傷むのを防ぐためだ。その先には当然、駄菓子を口にする子どもたちへの思いがある▼夢は店内を改築して、もっと多くのお客さんに来てもらうこと。客単価こそ小さいが、子どもたちと新中野に対する想いは大きなものがあった。

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