天声小悟:伝わる嫌悪

 新大久保のマクドナルドで人を待っていたときの話である。隣に座るカップルが、机を汚したまま席を立った。ちょっと待てと呼びかけたが、日本語が分からなかったのか、そのまま店を後にした▼しばらく経って来店してきた女子高生がその席に座ると、すぐに汚れた机上に気付いた。席とトイレを2、3回往復し、濡らした紙ナプキンで汚れを拭き取る。作業を終えると、何もなかったかのようにテキストを開き、試験勉強を始めた。やっぱり韓国人はーそんな自身の偏見を認識した瞬間であった▼国家レベルではどうか。レーダー照射や元徴用工問題に揺れる日韓関係だが、その根底には互いに嫌悪感があるように思える。証拠や主張を示すことで、国際法的な問題解決を図ろうとしても、互いの距離が一向に縮まらないのはこのためであろう▼○○人だからーそう思ってしまうのは、私だけではないはずだ。もしかすると、日本人もそう思われているかもしれない。だが、そのような偏見や先入観を持っている限りは、負の歴史から抜け出すことはできない▼民族という括りではなく、ひとりの人間として個人を見る世の中であってほしい。まずは自身の胸の中にある偏見と向き合い、それを自覚することからだ。▼「『好き』は言わないと分からないけど、『嫌い』は言わなくても伝わるよ」。幼い頃に母から言われた言葉を忘れたくない。

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